悲しみを乗り越えて

SAGAのホームページ等でご存知のことと存じますが、SAGA13 at Kanagawaの開催を牽引いたしておりました増井光子先生が、この7月13日に英国での馬術大会、エンデュランス競技中の不慮の事故で帰らぬ人となっております。余りにも突然の悲報で驚きと悲しみが混在した中で、本会の準備をよこはま動物園ズーラシアと共同で進めてまいりました。増井先生と本学の関係は、先生が本学の卒業生であると同時に、東京都を退職後3年間、本学の獣医学部動物人間関係学研究室の教授として、教育研究に携わって頂いており、また退職後も今日まで客員教授としてご指導を賜っておりました。先生は本学に取りましては、掛け替えのない宝であり財産でもありましたが、SAGAとて同様のことと存じます。

増井先生のモットーは現場主義であり、動物畑一筋で歩んできたと自負されておりますが、これは上野動物園の元園長であった古賀先生の教えの一つ、「動物のことを知りたけりゃ、観察するにかぎるんだよ。1分でも暇があったら、君、動物をみることだよ」を、身をもって体現してこられたものと拝察いたしております。本会の皆様方も増井先生と同じ思いで、日頃の活動に取り組まれているものと存じます。

また現在、我々人類を含め生物を取り巻く環境は、かってないほど厳しいものがあります。この環境変化の影響は、真っ先に弱者が被ることは歴史が示しておりますが、生態系の頂点にいると考えられる森の隣人の状況も近年では大変厳しことが、皆様方の報告から伺い知ることができます。彼らの現況は、我々人類の未来を想像させるものと思っております。本会の活動が人類への警鐘をも含み、取り組まれていた1人が増井光子先生であったことは小生が申し上げるまでもありません。

先生の遺志を継がれ、SAGAの更なる発展を祈念いたしております。

麻布大学

学長 政岡 俊夫

(2010/11/05 記)

ごあいさつ

SAGA 13の開催にあたって、世話人の一人としてご挨拶を申し上げます。

SAGAは、「アフリカ・アジアに生きる大型類人猿を支援する集い」の英文頭文字を並べた略称です。大型類人猿というのは、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンの3属のことです。人にもっとも近い生き物です。「進化の隣人」といえるでしょう。彼らを深く知ることで、人間とは何か、われわれはどこから来たのか、どこへ行くのかを考えます。また、彼らを架け橋として、人とそれ以外の生き物との関係に思いをはせます。すべての生き物が、地球の生命の誕生から現在まで、ずっと命をつないできました。いわば、生き物はみな「進化の同朋」だといえるでしょう。

SAGAは3つの提言を掲げてきました。自然の暮らしを守る。飼育下の暮らしをより良くする。彼らのためになる研究を推進する。毎年1回の集いを開催し、今年が13回目になりました。SAGAは集いです。学会ではありません。会員登録がありません。参加も無料です。自然保護や動物福祉の立場から、大型類人猿だけでなくあらゆる動物に関わる方々の集まりです。自主的に、みな手弁当で集まってきて、意見を述べ合い情報を交換します。事前登録はいっさい不要ですので、ぜひお気軽にお過ごしください。

SAGA 13の開催にあたっては、麻布大学と横浜市立よこはま動物園ズーラシアの皆様にお世話になりました。大学と動物園の2つの主催機関が協力して運営にあたっています。この機会に、麻布大学の政岡俊夫学長はじめとした皆様、とくに集いの統括をしてくださった高槻成紀教授に深く感謝いたします。よこはま動物園ズーラシアの皆様にも厚く御礼申し上げます。園長の増井光子さんが、本年7月に英国でお亡くなりになりました。SAGA 13の開催をお引き受けくださり、また13年前のSAGA提言の提言者のお一人でもあります。ここに、謹んで哀悼の意を表します。

たくさんの皆様方の暖かい志によって、SAGA 13が開催にまでこぎつけました。講演があり、ポスター発表があり、分科会での討論があります。ブース展示や、動物関連グッズの即売や、人形劇もあります。ぜひ、足を止めて、じっくりとご覧いただき、耳をすませてください。よろしくお願いします。

平成22年11月4日

SAGA世話人、京都大学霊長類研究所長、松沢哲郎