SAGAの基本方針


SAGA4

はじめに

SAGA基本方針

ジェーン・グドール特別講演

参加者一覧

 大型類人猿が人間の「進化上のいとこ」であると主張することは、決して大げさなことではありません。現存の大型類人猿と人間の「差」は、従来考えられていた以上に小さいものであり、このことは古生物学、自然人類学、生化学、分子生物学、神経科学、動物行動学、生態学および心理学など、多岐におよぶ専門分野の過去数十年の研究結果から証明されています。人口統計学、生殖および文化的行動に関する野生個体群の長期的研究により、類人猿と私たち人間の相違点の多くは、もはや質的なものというよりもむしろ量的なもののように思われます。
 このシンポジウムでは、科学者達の専門が研究室内での実験であるのか野外での調査であるのかにかかわらず、相互に共通の関心事である人間と大型類人猿の理解について、進化論的見地から議論をしてゆきます。霊長類学の全ての分野に関わる研究者が一堂に会します。そしてこの会合が、情報の交換や将来の協力体制の礎を築く機会となるだけでなく、さらに進んだ重要課題に対して総合的に取り組むための土台になると信じています。
 近年の人間活動は、野生の大型類人猿たちを絶滅の瀬戸際まで追いつめてきました。飼育下において、彼らはしばしばウィルス性疾患や遺伝子治療の研究などのために、侵襲的な生体臨床医学実験にさらされています。私たち人間に最も近縁な種である大型類人猿は、野生だけでなく飼育下においても生きてゆかなければなりません。そのような境遇を改善するために、私たちはよりよい解決策を模索し、それを実現させる努力をしなくてはならないのです。
 それゆえに、私たち大型類人猿の研究者はチンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オラウータンが人間とほとんど違わないということを力説してゆかなければならないのです。全ての大型類人猿種はCITES(ワシントン条約:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)において「絶滅の危機に瀕した種」と記されていることを私たちは忘れてはなりません。また、飼育下の個体群はしばしば不適切な管理に苦しんでいます。彼らの寿命は50年ほどで、ときにはさらに長生きする場合もあります。この数字は、いわゆる「実験動物」にはあてはまりません。私たちは、大型類人猿を侵襲的な研究に利用することを強く規制する必要があると信じています。そこで私たちは、全ての大型類人猿に対する各人の科学的理解をより深めるために、次の協議事項を提案します。
 1.野生の大型類人猿とその自然生息域を保全する。
 2.飼育下の大型類人猿の「生活の質(QOL)」を向上させる。
 3.大型類人猿を侵襲的な研究の対象にせず、人間理解を深める研究を推進する。
 ここでいう「侵襲的」という言葉は、通常の機能を回復できない不可逆的傷害を引き起こすような待遇を指します。つまり、人間に禁じられている違法または倫理に反した処遇は、大型類人猿にも同様に禁じることができるということです。
 この提案に則り、私たちは最近の傾向である野生の生息地破壊、および飼育下での大型類人猿の侵襲的な扱いが世界的に停止することを望んでいます。野生生物保護プログラムを支援するため、そして飼育下におかれている大型類人猿が快適に過ごせるようにするため、さまざまな分野の人々が共に取り組んでゆく必要があります。
 私たちは、21世紀の大型類人猿がよりよい生活を得られるために、世界中の人々の理解と支援の輪を広げていくことを望みます。
(*現在、本会に向けたアジェンダを検討中)