SAGA14の開催にあたって

 SAGA14が熊本市で開催されるにあたり、一言ご挨拶をさせていただきます。
 SAGAは特に大型類人猿を中心に、世界中をフィールドに研究されている先生方、また、大学、NPO、飼育スタッフと一般参加者が一堂に会するという素晴らしい集いです。

 今回の熊本開催は、2009年1月に、熊本市と京都大学とが結びました、野生動物の種の保存と環境教育についての連携協定が大きなご縁となったのはいうまでもありません。SAGA世話人代表でもいらっしゃる京都大学野生動物研究センター伊谷原一教授には、熊本開催に向けてひとかたならぬご支援を賜りました。この場をお借りして御礼申し上げます。

 熊本市動植物園は、多くの花や緑に囲まれた環境の中で、動物たちの美しさや能力に感動し、生きていることの素晴らしさを実感できる場所として、市民の皆様に親しまれています。現在、京都大学のご指導のもと、再編整備を進めており、生息環境に配慮した動物舎づくり等新たな魅力発信ができるよう取り組んでおります。今年3月には新しい動物舎「チンパンジー愛ランド」が完成し、現在4人のチンパンジーが暮らしています。

 熊本市は生活水の100%を地下水でまかなっている全国でもまれな都市です。また、動植物園は熊本市民のオアシスでもあり、豊かな水環境のシンボルでもある江津湖に隣接している、全国でも珍しい水辺の動物園です。
 今回のテーマは、SAGA世話人の皆様に、このような水の恩恵を受けている熊本市や動植物園の状況を配慮していただき、決めさせていただいたものです。

 水は全ての生命の源であり、地球はその命を育む水がある奇跡の星です。
 水環境や野生動物を取り巻く環境は厳しく様々な問題があります。SAGA14の熊本開催は大きなチャンスです。
 世界一のカルデラ阿蘇の恩恵を受ける水環境都市熊本で、ぜひ多くの方に参加いただき、水と動物たちが織りなす多様ないとなみや、人、動物、自然環境の未来について情報交換ができればと思います。

 皆様のご来園を心からお待ちしています。

熊本市動植物園

園長 本田 公三


ごあいさつ

 SAGAの世話人を代表して一言ご挨拶を申し上げます。

 SAGAは、”Support for African/Asian Great Apes”(アフリカ・アジアに生きる大型類人猿を支援する集い)の略称です。大型類人猿とは、わたしたちヒトに最も近縁なチンパンジー、ゴリラ、オランウータンを指します。この集いの目的は大型類人猿についての理解をさまざまな角度から深めることにあります。わたしたちの「進化の隣人」とも言うべき彼らをより深く知ることで、わたしたち自身の存在や未来について考えます。また、現生するすべての大型類人猿が絶滅危惧種になっていることから、野生での保全活動や飼育下での福祉実践を推進することもこの集いの大きな目的の一つになっています。   

 そうしたことからSAGAでは以下の3つの提言を掲げています。1.大型類人猿ならびにその生息地の保全のための活動を行う、2.飼育下の大型類人猿の「生活の質(QOL: Quality of Life)」を向上させる、3.大型類人猿を侵襲的研究の対象とせず、非侵襲的手法による科学的研究によって彼らへの理解を深める。わが国では2006年に大型類人猿を対象にしたすべての侵襲的実験がストップしました。今後は非侵襲的研究を学際的に発展させると共に、これまでのSAGAで蓄積された成果を、地球上のあらゆる生きものとの共存のために活かすべきでしょう。人はもともと自然の一部のはずです。しかし、人とそれ以外の動物という二分法が存在する限り、人と他の生きもの、あるいは自然との共存などあり得ないのです。

 SAGAはいわゆる学術会議ではありません。大型類人猿だけでなくあらゆる動物の研究、飼育、福祉、保全に関わっている方々、単に動物や自然に興味を持っている方々など、どなたでも自由に参加できる場です。各自が自分の意志で集まり、他者の話に耳をかたむけ、自分の意見を述べ、そしてさまざまな情報を交換します。今春、わが国は未曾有の大災害を経験しました。自然環境にはまだまだ未知の世界がありますし、予期せぬ現象が起こります。この機会に、地球の一住人としてわたしたちのあるべき姿について考えてみるのもよいかもしれません。

 最後に、SAGA 14の開催にあたっては熊本市と熊本市動植物園のみなさまに多大なるご尽力をいただきました。とくに幸山政史熊本市長と本田公三熊本市動植物園長には、この場を借りて深く御礼申し上げます。また、SAGA14の実現に向け奔走してくれた京都大学野生動物研究センター・熊本サンクチュアリのスタッフにもあわせて心より感謝の意を表したいと思います。ここ数年、SAGAは大学と動物園が協力して主催するスタイルが定着しつつあります。こうした動きがさらに広がり、わが国の学術、教育、文化の発展に繋がることを期待しています。

平成23年10月1日

SAGA世話人、京都大学野生動物研究センター 伊谷原一